コラム「オフショア開発の最新動向」column

「キャリア機会の追求」に隠された本音

中国人プログラマが会社を辞める理由と残る理由を教えて下さい

優秀な中国人従業員が会社を辞める理由は「給与への不満」と「キャリア機会の追求」が双璧をなします。一方、中国人従業員が会社に残る理由は、「会社の成長性」「今の職場にキャリア機会がある」などが上位を占めて、「給与に満足」は第3位に下がります。
オフショア大學講義録より

先日、人事担当者が読む専門誌から「外国人従業員の雇用とマネジメント」について取材を受けました。

――中国人プログラマが望む「キャリア機会の追求」とは、もっと知識や技能を高めたいという事でしょうか?

幸地:通常、キャリア機会とは内的報酬に相当します。ところが、中国専門家がアンケート結果の裏に隠された本当の動機を探れば、首をかしげたくなります。元気いっぱいの優秀な中国人プログラマのいう「キャリア機会の追求」とは、役職や権限などの付与を伴う外的報酬と強くリンクします。つまり、中国人が会社を辞める理由は「外的報酬」の不足という部分が大きいです。

――中国人が、キャリア機会を「外的報酬」と考える原因は?

多くの中国人従業員は、学生の頃から勉強熱心で、職場でも技術力向上に対する強い執着心を持ちます。その動機は「早くリーダーになりたい」「早く管理者になりたい」という人より先に進みたいとする外発的な要因に強く影響を受けます。

――中国人プログラマは、お金のためにキャリアを磨くのですか?

必ずしも、守銭奴のような「先に金ありき」の精神ばかりではなく、「大学で学んだ技術を即戦力として活かしたい」「寄り道せず一直線に上を目指したい」という内発的な動機要因も見逃せません。

――日本人だってキャリア開発において経済性を重視するのでは?

日本人と中国人が同じような強い達成欲求を持っていても、その行動様式は文化的相違によって大きく異なります。中国人プログラマの短期指向、課題指向、さらに、中国社会の不安定さが、彼らがキャリア機会の追求において「ガツガツ」する態度を生み出す原因となります。だからこそ、ダイバーシティマネジメントの必要性が叫ばれます。

参考:日本研修から戻った直後に給料アップ要求

「私は日本研修によって知識を身につけました。日本語能力も向上しました。ですから、私の給料をアップしてください。」

【読者コメント(2件)】

・組織で認めるかはわかりませんが、給料アップなしだったら本人が転職する可能性が高いと思います。本質は変わらないでしょうけど、「能力がアップしたので、もっと上層の仕事をください」みたいにしたほうが上司に納得できたかもね。

・日本と正反対、ご存知のように中国企業では新卒を採用したがりません。従業員も能力に即した給与をタイムリーに反映してもらわないと困るというスタンスです。日本のようにじっくり育成して将来的に給与に反映していく年功序列と沈黙の了解で現在と即しない給料で将来の保障をもらっています。最初の育成にコストをかけてもいずれバリバリ働いて会社に貢献していただける。(ずっとこの会社にいる前提なので)中国の方はそのような環境で育てられていませんし、同じ企業で骨を埋める心持も最初からありません。まして外国企業に対してどれだけ心を許しているか微妙です。

海外在留の民間企業の関係者数の推移

※参考:「グローバル人材マネジメント研究会」報告書(経済産業政策局 2007年)

■問いかけ

<問1>
IT技術者が望む外的報酬と内的報酬をそれぞれ5つ挙げなさい。

<問2>
過去に転職経験をもつ外国人従業員をつかまえて、前の会社を辞めた理由(本音と建て前)を聞き出しなさい。

<問3>
オフショア推進に抵抗する日本人従業員の不満の理由(本音と建て前)を聞き出しなさい。オフショア抵抗者に足りない外的報酬と内的報酬を、ぞれぞれ列挙しなさい。

ヒント→ http://www.ai-coach.com/seminar/workshop.html

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